2024.05.16 トットの森
この動画は、近日公開予定です。
しばらくお待ちください。
軒のない住宅は危険です。小屋裏で結露したり、外壁も早く劣化したりします。
ウサクマさん:ムロタさん、軒ってなんですか?
ムロタ:軒というのは、屋根の一部を指す名称です。軒の出とか軒天とか、聞いたことないですか?
ウサクマさん:そう言われれば聞いたことあります。
ムロタ:軒の出は外壁から軒がどのくらい出ているのか。軒天は軒の裏側の仕上げ材を示すことが多いですね。ですが近年はこの軒がない建物が非常に多いです。理由は色々あって価格的なことやデザイン上でのこと、また法規上仕方なく無くす場合もあるんですが実はこの軒って建物にとってとても重要な役割があってこれがないと小屋裏で結露したり外壁の劣化が進んだりするんです。
ウサクマさん:大変じゃないですか!?それもっと詳しく教えてください。
ムロタ:分かりました。では軒の重要性と軒を無くすときの注意点を紹介します。まずは、なぜ軒のない建物が増えたのかです。これは主に“価格”と“採光”に理由があります。
ウサクマさん:価格は分かりますが、採光ってなんですか?
“ムロタ:採光”というのは居室には、『窓を設けて光を入れなさい』という決まりがあって、この居室に光を取り込むことを言います。
ウサクマさん:へー、でもこの採光がどうして軒の有る無しに関係するのですか?
ムロタ:この採光をとる際に、有効となる窓にも決まりがあって、窓をつければOKってわけではないのです。その決まりがこんな感じです。
ムロタ:この決まりは、軒先から隣地境界線までの距離がとても重要で、この距離が空いているほど、下の方の窓まで有効な窓とすることができます。
ウサクマさん:なるほどね、そんな決まりがあるのですね。
ムロタ:例えば、隣地から外壁まで80cm空いていても、軒先からの空きが10cmしかなかったら、この高さの窓までしか有効にできません。ですが、軒を無くすことで80cm空けたら、下の窓まで有効な窓にすることができます。間口の狭い土地などで隣地との空きが十分に取れないときには、この有効な窓を確保するために軒の出を縮めたり、無くしたりするわけです。
ウサクマさん:そうだったんですか、なので急速に増えたってことですね。
ムロタ:急速に増えている理由はどちらかというともう一つの理由、“価格”の方じゃないですかね。実は、軒を無くすと価格がとても安くなります。軒の出を縮めたりするくらいではさほど価格は変わりませんが、無くしてしまうとガンと価格が下がります。
ウサクマさん:どうしてですか?
ムロタ:軒を構成している木材や軒天の材料・職人の手間など、全てなくなるので大きいですよね。軒は建物をグルっと囲むので長さもあります。凸凹が多い家だと手間もかかります。決して軽視できない金額です。
ウサクマさん:なるほどね。
ムロタ:そして、施工業者は平面図で価格を出すので、同じ平面でも軒の出がない建物は価格を安く提示できます。これって営業する方からしたら、大きな武器になりますよね。このような理由で軒の無い建物が急激に増えているんですが、実は落とし穴があって、ちゃんと対応しておかないとかなりのデメリットがあるんです。
ウサクマさん:ええええー!
ムロタ:その説明の前に、軒の元々の役割を知る必要があります。
ウサクマさん:役割があったのですね。
ムロタ:当然です。昔から長い時間をかけて進化してきた家の要素で、重要な役割があります。と言っても、本当に昔時代劇に出てくるような年代だと縁側があったり、茅葺だったり、現在の住宅とはかけ離れてしまうので、近年の住宅における軒の役割になります。
ウサクマさん:なるほど。
ムロタ:役割の1つ目は、外壁を汚さない又は守ること。軒が出ることで外壁が風雨にさらされる度合いが変わります。雪国では軒があることで、外壁周りの積雪が減ります。外壁に雪が接触するのは良いことがありません。基礎の部分でおさまるように軒を出します。それでもおさまらない地域では、外壁の素材を金属系にしたりします。吸水しない材料ということですね。
ウサクマさん:なるほど。
ムロタ:二つ目は雨だれを切ること。これは一つ目の役割とも被っているのですが、屋根を伝ってきた雨水が、強風に煽られて外壁に伝わないように、シッカリと下に落とす役割ですね。ちなみに、屋根の勾配が素材ごとに設定されているのは、この強風に煽られて逆流しないためというのが大きな理由の一つです。
ウサクマさん:雨水って風に煽られるて移動するのですね。
ムロタ:三つ目の役割は、日射をコントロールすること。
ウサクマさん:夏の日射を防ぐってヤツですね。
ムロタ:そうですね。ですが、近年では軒を出すと言っても60cm~80cmほどで日射を防ぐ役割というのはほんの少しです。ひと昔前までは、居室の横には縁側がついていて、部屋から軒先までは2.5m程ありました。
ウサクマさん:縁側いいですよね。憧れますけど、なかなかスペースが取れないですよね。
ムロタ:そうですね。この深い軒を利用して、日射を防ぐことで夏は涼しく、冬は雨戸などを取り付けることで寒さを緩和する緩衝地帯になっていました。
ウサクマさん:昔の人の知恵ですね!
ムロタ:その通りです。ですが、近年の住宅ではここまで深い軒を出すことは現実的ではないのでこの役割はほんの少しです。平屋や軒のすぐ下の窓であれば、真夏の昼の日射程度は防げますが。
ウサクマさん:なるほど。
ムロタ:そして最後の4つ目が一般的には知られていないのですが、とても重要なんです。
ウサクマさん:なんですかそれ?
ムロタ:それは小屋裏の空気を換気する役割、小屋裏換気ですね。
ウサクマさん:ほー、小屋裏換気ですか?
ムロタ:天井断熱の場合、この小屋裏の空間に屋根の熱がこもり、とても高温になります。その温度は70℃にも達します。
ウサクマさん:たっか!!
ムロタ:なので、この熱い空気を逃がしてあげる必要があります。理想は温度が上昇しないレベルの換気量があることなのですが、そこまでは難しいので、できるだけ温度を上げないようにという感じですね。この小屋裏換気の給気口や排気口になるのがこの軒の部分です。
ウサクマさん:へーそんな役割があったんですね。
ムロタ:近所の家の軒裏を観察すると、軒天に細かい穴が空いていたり、軒先や軒の根本に換気用の部材が取り付けられていたりします。
ウサクマさん:そうですかー、ちなみに小屋裏換気しないとどうなりますか?
ムロタ:色々と不具合が起こります。不具合で一番困るのは結露じゃないですかね。
ウサクマさん:70℃なのに結露するのですか?
ムロタ:条件が揃えばですが、結露します。70℃にまで熱くなった空気は乾燥しますので、周囲の木材などから水蒸気を集めます。仮に、湿度が80%まで上がると、5℃下がるだけで結露します。まぁこれは極端な例えですが、70℃で湿度40%でも50℃を下回ると結露します。
ウサクマさん:50℃を下回るのですか?
ムロタ:夏のカンカン照りでチュンチュンになった屋根が、突然のスコールなので急激に冷やされたらどうなります?屋根が冷やされれば、当然屋根の裏面の温度も下がります。そこに70℃で湿度40%の空気が触れれば、十分に結露する可能性があるでしょうね。
ウサクマさん:なるほどね。
ムロタ:これを防ぐのが小屋裏換気で、小屋裏の温度や湿度が上がり過ぎないように換気するわけです。
ウサクマさん:すごい重要じゃないですか!
ムロタ:これら4つが、近年の住宅における軒の役割です。
ウサクマさん:こんな重要だったのですね。必要なのかな、くらいに思っていました。
ムロタ:ですが先程紹介した通り、この重要な役割のある軒を取っちゃうのです。
ウサクマさん:なんか不安になってきました。軒を無くしても大丈夫ですか?
ムロタ:大丈夫ではないので、注意して欲しいです。価格的な理由は別ですが、採光上の理由でやむを得ず軒を無くすことはあります。そんなときは、先ほどの役割の代替え案として外壁を金属系のモノにすることをオススメします。
ウサクマさん:水に強そうですよね。
ムロタ:そうですね。ですが、ここでのポイントは金属系サイディングではなく、屋根に使うAT葺きや立平葺きを外壁に利用することですね。
ウサクマさん:どうしてですか?
ムロタ:金属系サイディングと、屋根に使われているガルバリウム鋼板では、基材は同じかもしれませんが、その塗装の強度が違います。より耐候性の高い屋根の材料を使いたいということです。
ウサクマさん:そうきましたか。
ムロタ:小屋裏換気に関しては、軒ゼロでも使える換気部材や、小屋裏にサーモファンなどを設置して対応することをオススメします。温度が上がると自動でスイッチが入るセンサー付きのファンですね。その際は給気口を含めた経路の確認もしておくとよりベストですね。
ウサクマさん:なるほど。
ムロタ:ですが、一般サイディングで軒ゼロの住宅も多く見かけますし、換気部材がついていないと思われる家も残念ながら見かけます。ついていないように見えるだけで、ちゃんとついているなら良いんですが。
ウサクマさん:そんなー。
ムロタ:実は、小屋裏換気って確認申請のチェック項目から外れていて、チェックされません。長期優良住宅やフラット35などの認定を受ける住宅の場合は、そのチェック項目に小屋裏換気も入っていますが、一般の確認申請ではチェックしません。なので、これに関しては自分で確認するしかないんです。
ウサクマさん:そうなりますか。
ムロタ:そして、軒ゼロにも2つ種類があります。鼻隠しや破風板があるタイプとこれらがないタイプです。
ウサクマさん:鼻隠し?破風板?
ムロタ:これはらこの部分のことです。
このように鼻隠しや破風板がついていれば、ここで雨だれも切れ、この部分に換気部材を仕込めます。ですがこれらがついていないケース、こんな感じです。
外壁と屋根が直接接しているケースですね。この場合は、外壁に直接雨樋をつけるので雨だれも切れません。換気部材をつける場所もありません。なので、サーモファンなどの違う方法で換気しなければなりません。
ウサクマさん:そうなんですかー。
ムロタ:どちらにせよ、軒ゼロの家を建てるときは、『小屋裏換気はどうなっていますか?』って確認して欲しいですね。
ウサクマさん:分かりました。ちなみに屋根断熱の場合はどうですか?
ムロタ:屋根断熱はなおさら注意が必要です。屋根断熱の場合は、この小屋裏に当たる部分が垂木と垂木の間この空間しかありません。この空間はとても狭く、屋根と断熱材に挟まれていますので、もの凄く高温になります。換気部材を使っての換気も中々難しいので、極力室内に影響が出ないようにプラスチック系の断熱材を用いて、更にテープで隙間を防ぎ、結露が発生しても速やかに流れ出るような工夫が理想ですね。当然、屋根と断熱材の距離が近いので、その断熱材の厚みもぶ厚くする必要があります。
ウサクマさん:なるほどね。
ムロタ:屋根断熱はリスクが大きいのでオススメはしませんが、やむを得ないときはしっかりと対処しておきましょう。
ウサクマさん:分かりました。
ムロタ:いかがでしたか。軒の役割と重要性軒を無くすときの注意点を理解していただけけましたか?
ウサクマさん:バッチリです!
ムロタ:はい、今回の話はここまでです。